会社の休憩時間。
「で、これがそのスイス製の最高級時計で、職人が手作りで~」
私は後輩の田中君に中身のない自慢話を聞かされていた。
正直どうでもいい。
「それで何か面白い機能でもついてるの?」
早く話を切り上げようと私が適当に相槌を打つと田中君は待ってましたとばかりに続けた。
「実はこの赤いボタンを押すとこの辺一帯に核ミサイルが飛んでくる機能をつけたんですよ!急に死にたくなったら使うらしくて、この機能のために100億円払いました」
私は吹き出した。
「ちょ、それ絶対騙されてるやつだから」
「え?」
私は続けた。
「そんな機能あるわけないじゃん(笑)普通買ったときに気付くよね。これだからコネ入社のシティボーイは困るな。あきれて言葉にもならないよ。隙しかないというか無能がにじみ出てるというか。考える頭もないの?」
私が言い終わると田中君は無言で赤いボタンを押した。
私は優しく諭した。
「いや、それ押しても何も起こらないから。まさかまだ騙されたことに気づいてないの?ほんと頭パッパラパーだな。脳に綿でも詰まってるんじゃないの?そういえば昨日も~」
会社があるS市が日本から消失したのはその10分後のことだった。